痔核手術の変遷

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痔核手術は、病態生理の考え方から、大きく以下の4つに分類されます。

1.痔核を切除する
2.痔核を壊す(硬化療法・焼灼療法)
3.痔核への血流を遮断する
4.痔核を釣り上げる(引き上げる)

歴史的には、これらの考え方に基づき、さまざまな治療法が試みられてきました。その中で、現在、日本で標準的な術式として広く行われているのは「結紮切除術(LE法)」と「ジオン注射(ALTA療法)」の2つです。

ジオン注射(ALTA注射)

ジオン注射は、従来の「痔核を壊す」治療を安全性の高い形へと発展させた治療法です。
かつて行われていた腐食療法や焼灼療法は、侵襲が強く合併症の問題もあったため、現在ではほとんど用いられていません。
これらに代わって登場したのが、**粘膜下の痔核病変のみに選択的に作用する硬化療法であるALTA注射(ジオン注射)**です。

ミリガン・モルガン法(結紮切除法 LE法)

この手術法は、1937年に発表された方法です。**「痔核を切除する」「痔核への血流を遮断する」**という考え方に基づいています。
痔核に流入する動脈を結紮して血流を遮断し、その後痔核を切除する方法です。
日本では、この方法を発展させた結紮切除術(Ligation & Excision:LE法)が広く用いられており、標準的な術式として位置づけられています。

低侵襲手術への工夫

術後の痛みや侵襲を減らすことを目的に、さまざまな工夫がなされてきました。

自動縫合器を用いて痔核への血流を遮断し、痔核を引き上げるPPH法や、血管カテーテルを用いて痔核への流入血管を閉塞する**内痔核動脈塞栓術(Emborrhoid)など、血流制御や支持組織の再構築を目的とした治療法が開発されています。
また、痔核を引き上げるという考え方に基づいたACL法(Anal Cushion Lifting)**やMuRAL法なども登場しました。 これらの術式は、一部の医療機関で施行されています。

ハイブリット手術

近年では、硬化療法(ジオン注射)と手術療法を組み合わせた**「ハイブリッド手術」**も行われるようになりました。

これにより、治療効果を高めながら、体への負担や術後の痛みを抑えることが可能となりました。

代表的なものとして、結紮切除術とALTA療法を組み合わせたLE+ALTA併用療法があり、これは現在、日本における標準的な治療の一つなりつつあります。
治療効果を高めながら、身体への負担や術後の痛みを抑えること(低侵襲手術)が可能となりました。

日帰り手術「クランプトレーザー法」

さらに、その流れを発展させ、日帰り手術を前提として開発された治療法が、CO₂レーザーメスを用いた 「クランプトレーザー法(Clamped Laser Distal Hemorrhoidectomy:CLDH)」です。

本日式は、粘膜下の痔核病変を主に取り除く新しい概念である**「痔核郭清」に基づいており、 痔核切除・痔核郭清・ジオン注射という3つの治療技術を組み合わせた手術です。
粘膜切除を最小限に抑えた小さな創で痔核切除を行うことを特徴としています。
これにより、術後の痛みを可能な限り軽減し、日帰りでの痔核手術を実現しました。

なお、本術式については、2023年11月の日本大腸肛門病学会において、約1,500例の手術成績が報告・発表されています。
その成績は、
・日帰り手術率100%
・翌日仕事影響な100%
・翌日の強い痛みなし92.2%
・出血の合併症0%
と、極めて良好な結果が示されています。

このように、痔核手術は低侵襲化が着実に進んできました。
今後さらに技術が洗練されることで、痔核手術は白内障手術のように「日帰り手術が標準」となる時代を迎える可能性があります。

※白内障手術は、20年前までは1週間程度の入院が必要でしたが、現在ではそのほとんどが日帰りで行われています。

痔核手術の歴史の表

手術法 日本での施術状況
ホワイトヘッド法
Whitehead法
使用されていない
ミリガン=モルガン法
Milligan–Morgan 法(MM法)
使用されていない
結紮切除術
Ligation & Excision(LE法)
標準術式
ファーガソン法
Ferguson 法
使用されていない
痔核動脈結紮術
Hemorrhoidal Artery Ligation(HAL)
一部施行
Hemorrhoidal Artery Ligation with Recto-AnalRepair(HAL-RAR) 使用されていない
分離結紮法 一部施行
ゴム輪結紮法 一部施行
内痔核動脈塞栓術
Hemorrhoidal Artery Embolization(Emborrhoid)
一部施行
Procedure for Prolapse and Hemorrhoids(PPH) 一部施行
Mucopexy Repair of Recto Anal Lining(MuRAL) 一部施行
Anal Cushion Lifting(ACL法) 一部施行
PAO 一部施行
Xiaozhiling 使用されていない
ALTA療法(ジオン注) 標準術式
痔核結紮+ALTA併用療法(LE+ALTA) 標準術式
クランプトレーザー法
Clamped Laser Distal Hemorrhoidectomy(CLDH)
一部施行